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最高裁判所第二小法廷 昭和47年(オ)1223号 判決

主文

理由

上告人の上告理由一について。

被上告人がその個人名義による手形裏書をする権限を訴外渡部彦太郎に付与していたものとは認められないとした原判決の認定・判断は、挙示の証拠に照らして肯認することができ、右認定・判断に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断および事実の認定を非難するものであつて、採用することができない。

同二、(1)について。

記録に現われた第一審および原審における審理の経過に徴しても、所論の点に関し主張立証を尽くす機会が与えられなかつたものと認めることはできず、原審の訴訟手続に所論の違法はない。論旨は採用することができない。

同二、(2)について。

原判決は、被上告人が渡部に対し被上告人個人を代理して法律行為をする権限を付与した事実は認められないとし、これを理由に、渡部がした本件手形裏書につき民法一一〇条の規定の類推適用による表見代理は成立しないとしたのであつて、この点の認定判断は、正当として是認することができる。したがつて、右表見代理の成立のためには第三者において当該行為が代理人の行為であることを認識していることを要する旨の原判決の判断の当否は、ただちにその結論を左右するものではないというべきである。論旨は、ひつきよう、原判決の結論に影響しない傍論たる判示を非難するものであつて、採用することができない。

(裁判長裁判官 小川信雄 裁判官 村上朝一 裁判官 岡原昌男 裁判官 大塚喜一郎)

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